顎関節症とスプリント療法について
顎関節症の症状
顎関節症の症状として以下のようなものがあげられます。
顎関節症の症状 1:顎が痛む
顎を動かしたときに痛む特徴があります。
口の開け閉めや、物を咬んだときなどに顎間接や、こめかみの部分が痛みます。
ただし、顎の動きに関係なく痛む場合は、他の病気の可能性があります。
顎関節症の症状 2:開口障害
正常な場合、口を開いたときに指が3本(約40ミリメートル)入りますが、それが、指2本(約30ミリメートル)以下しか入らない状態に開口障害となります。
顎間接に異常があるために大きく開けられない場合と、開くと痛みを感じてしまうため無意識のうちに動きを抑えてしまっている場合等があります。
(上記の指の指標は個人差がございます。)
顎関節症の症状 3:関節音
顎を動かしたときに関節部分(耳の前あたり)から音がなる症状です。
「カクカク」鳴る場合の他にも「ジャリジャリ」という音が鳴ったりと、音の種類は様々です。
音が鳴るだけで、痛みはまったくないこともあります。
以上の3つが主な症状です。その他にも体全体のバランスが悪くなることから、肩こりや腰痛、首が回らなくなる等の症状が出る場合もあります。
顎関節症の原因
顎関節症の原因は様々な因子が考えられます。
顎関節症の原因 1:ブラキシズム
現在、顎関節症の最も大きい原因として「ブラキシズム」があげられます。
ブラキシズムとは、クレンチング(くいしばり)、グライディング(歯ぎしり)、タッピング(歯をかちかちさせること)のことを指します。
筋肉を緊張させてしまうことで、顎関節に過度の負荷とダメージを与えてしまいます。
そして、ブラキシズムが生じる原因として、日常のストレスや偏咀嚼(片方の顎で咬むこと)、習慣(頬杖をつく、うつ伏せで寝る等)があげられます。
顎関節症の原因 2:悪い咬み合せ
最近まで顎関節症の原因は、この悪い咬み合せにあるとされていました。
しかし、現在では顎関節症の原因はいくつもの因子が積み重なって起こると言われています。
悪い咬み合せも、その因子の一つだと考えられています。
顎関節症の原因 3:その他
顎などを強く打って損傷してしまった場合や、歯の治療などを行う際に必要以上に大きく口を開けた場合があげられます。
顎関節症の原因はこの他にもたくさんの因子があげられます。
スプリント療法

スプリント療法とは、歯に馬蹄型の装置をつけるのですが、ボクシング等で使用されるマウスピースを想像して頂ければ結構です。
主に2種類あり、「スタビライゼーション・スプリント」と「リポジショニング・スプリント」があります。
スタビライゼーション・スプリントは、咬合安定用のスプリントのことで、ブラキシズムの抑制、関節への負荷の軽減、閉口筋(口を閉める際に使用する筋肉)のリラクゼーション効果等を目的に使用します。
リポジショニング・スプリントは、顎の関節の中でずれてしまった関節円板(クッションの役目をはたす組織)を元に戻す目的で使用します。
下の写真は、スプリントを作る際に行うタッピング運動(左写真)と実際に装着した例(右写真)です。


顎関節症の治療の際は、原因となっている悪い習慣等を患者さんご自身で意識的に注意するように促す「認知行動療法」や、「運動療法」、を並行して行っていきます。
画像出典:株式会社 日本歯科評論社「スプリント療法の実際」
スプリント治療の治療期間
上記のように、顎関節症の原因は多くの因子が関係しているため、確定的に治療期間を定めることはとても難しいことです。
ただ、ひとつの目安として治療開始から1ヶ月で治療効果の判定を行います。
日常生活を送る上で支障がなくなっている場合は、スプリントの使用時間を少しずつ減らし、最終的に使用を止めれるように治療いたします。
しかし、スプリントの使用を減らしたことが原因で症状が再発するようなケースでは、長期の治療期間を必要とします。
顎関節症とスプリント療法
上記のように、顎関節症の最大の原因と考えられているブラキシズムを抑制でき、顎の関節への負担も軽減できるスプリント療法はとても効果的であるといえます。
そして、顎関節症に伴う首、肩、腰などの痛みの改善も期待できます。
しかし、このスプリント療法の効果については、証拠に基づく医療(evidence based medicine, EBM)とはいえませんが、スプリント療法が顎関節症の諸症状の消失や緩和に効果があることは多くの研究により示されています。
さらに、顎関節症の他の治療法(手術療法や薬物療法など)より、侵襲や全身に与える影響が少ないなどの利点もございます。
リスクが全くない治療法ではありませんが、顎関節症に対して高い効果が期待できる治療だといえます。


